少子高齢化に加えてグローバルな課題が山積する将来の社会保障制度を考えるにあたって、人間の本性を理解するために、人権思想や戦争、不平等への対処策を概観したうえで、社会保障制度の歴史を辿り、現在の各国の制度を比較した。また、医療技術の進展と価値観の多様化に伴って発生する生命倫理問題を解決するためのキーワードである「人間の尊厳」の尊重が、将来の社会保障制度の諸問題を解決するためにも重要であるが、立場の違いによる尊厳の衝突について事例を挙げて考察した。
社会保障制度は懲罰的な施策と温情的な施策の狭間で試行錯誤する歴史ということができる。貧困を自己責任として放置したり懲罰を課したりしたエリザベス救貧法(1601年)の時代は、克服困難な格差や社会不安を増長した。最低生活を保障して税による給付を行ったスピーナムランド制度(1795年)では、雇用主は賃金を下げ労働者は怠業するようになって一般市民の税額が増加した。現代の日本では基本的人権の理念や、国民皆保険や公衆衛生の充実など基本的なインフラは整備されてきたが、負担の逆進性や世代間格差など改善すべき課題は多い。また、新生児の数%は何らかの遺伝的な障害をもつと国連科学委員会が報告している。生まれた場所や遺伝的資質など、本人の責任に依らない競争力の低下は何らかの形で社会的に是正されるべきことを論述した。
本書は、「週刊教育資料」で紹介された。(Goto 「書評」)
また、神戸女学院大学(2021年)の国語の入学試験問題、及び広島修道大学(2017年)の政治・経済の大学入学試験問題に引用された。(Goto 「大学入学試験への引用」)
関連資料
岸 邦和:社会保障制度の歴史と将来 東京臨床小児歯科研究会 2017年
Jumpto 4講義ノート 社会保障制度の歴史と将来PDF
目次


