宗教と生活習慣

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宗教と生活習慣 -フランスのムスリムに対する要求に対して

参考文献
第三共和政下の政治的諸課題とデュルケーム 廣澤孝之
デュルケムと「道徳の実証科学」 厚東洋輔
近代初頭の「啓蒙期」に戦われた「宗教 vs 理性」の対立は,19 世紀に至ると「道 徳 vs 科学」という形で変奏されることになった。

フランスの政教分離の歴史は長い。宗教革命後のカトリックとプロテスタントの対 立や教育現場の宗教の支配などを,理性的人間の道徳観念と対立するものととらえた 人たちがいた。フランス革命の頃コンドルセ侯爵が公教育における宗教の分離を主張 し,それから 80 年後にデュルケームが,産業革命の発展を背景にして宗教に基づか ない道徳を主張した。フランスで政教分離法が成立したのは 1905 年。フランス社会 に宗教の分離が定着するのはそれから何年も経ってからだ。
「宗教的信仰と儀礼を持たなかった人間社会は,記録されている限り一つもない」 とフレデリック・ルノワールが言う通りだとすると,宗教というものは生活習慣や民 族料理への嗜好のようなものであって,他人から強要されても容易に変えられるもの ではないだろうと思う。
現代のフランスがムスリムに対して求める宗教習慣の放棄は,フランスが 100 年以 上かけて変更してきた期間を考えると性急するように思う。それも,イスラム社会で はなくムスリム個人に向かう要求だから。個人が大切にするものを,それが何であれ, 誹謗や中傷することは,道徳的に善くないかもしれないと感じる感性ももっていたい と思う。
国民同士の反目を回避するためには,ルネッサンスを経て人間の理性を信じること のできる社会と宗教に依存する社会が相互に容認することが必要だ。国民の一体感を 維持することが社会を安定させる要素の一つだからだ。日本に多神教と無信仰と不可 知主義と一神教が混在していることは,諸外国に比して社会不安の要素の一つがない のだと言える。

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